親族が成年後見人になれる?選ばれない?

認知症などにより判断能力が低下すると、「成年後見人」という人が、あなたの財産管理などを行う場合があります。

望んでいなくても、事情によっては、成年後見人をつける必要があります。

成年後見人は、専門家等の第三者が就くケースが多いです。

一方で、親族の選任を希望する方にとっては、希望どおりに選任されるかどうかは、重要です。

本記事では、

「実際に親族が選任されるのか?」
「選任されないのはどうしてなのか?」

を中心に、情報をお伝えします。

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目次

「誰が後見人になるか」は法定後見で問題になる

成年後見人の制度は二種類あり、
法定後見任意後見があります。

こちらも併せてご覧ください→成年後見制度を知る~まずはこれだけ~概要~知る①

任意後見は、「誰が」任意後見人になるかが決まっています。
自分で決める制度になので、「誰がなるか」は、問題になりません。

「誰が」後見人になるのかが問題になるのは、
法定後見」の制度を利用する場合です。

法定後見は、すでに判断能力が低下した人について支援をするための制度です。

法定後見の場合、誰が成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)になるかは、
家庭裁判所(以下、家裁とも言います)が決めます。

後見人を「どうしても自分で決めたい」という方は、
任意後見契約を検討して、元気なうちに備えてください。

実際、親族が選任されているのか?~統計~

裁判所のWebサイトでは、「成年後見関係事件の概況」という情報を毎年出しています。

転載やリンクはできませんので、ご興味のある方はネット検索してみてください。

令和4年の情報を見ますと、

成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)について、選ばれた内訳は以下のとおりです。

専門家等の第三者 80.9%

親族       19.1%

成年後見制度の開始当初は親族の選任が多かったのですが、
最近は、専門家等の第三者が多く選ばれています

背景としては、親族の適任者がいない(核家族・少子化)のでしょう。

親族と疎遠で頼める人がいないために後見人の候補者として親族の名前が挙がらず、
親族以外の第三者にお願いするという事情かと思われます。

「専門家」は、
弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士等です。
社会福祉協議会が選任されるケースもあります。

この点も、裁判所Webサイトの「成年後見関係事件の概況」に書かれています。

ナゼ親族が希望する?

親族(家族)が、法定後見人に選ばれることを希望する理由は、
次のとおりかと思います。

・知らない人に財産管理や身上保護(監護)を任せたくない
・成年後見人等は専門家が選ばれると費用がかかる
・基本的にずっと続く
・親族が選任されれば費用を抑えられる可能性あり

以下で細かく見て参ります。

知らない人に財産管理や身上保護(監護)を任せたくない

成年後見人等が選ばれ、後見事務が始まると、

成年後見人等は、財産のすべてや、身体の状況を把握します。

さらには親族の状況を知ることになります。

今まで家族の中で行ってきたお金のやり取り・やりくりについて、

例えば、

家計を支えてきた高齢男性に成年後見人等が就いた場合、

成年後見人等が預金額、金融商品を持っているか?など、財産のすべてを他人が知ることになる他、

日常生活費について(例えば妻の生活費)も成年後見人等を介してやり取りを行うでしょう。

家族にしてみたら、

・面倒
・他人に財産を知られたくない

という感情が生じやすい状況です。

親族が成年後見人等を担うことで、
負の感情をやわらげる効果が期待できます。

専門家が選ばれると費用がかかる

成年後見人等に、専門家が選任されると、専門家に報酬を支払う必要が生じます。

成年被後見人(被保佐人、被補助人)=ご本人(判断能力が落ちた方)の財産から支出することになります。

家裁は、法定後見における成年後見人等の報酬の目安を提示しています。

その報酬の目安によりますと、
通常の財産を管理する場合は、月2万円。

財産が多くなると2万円より高くなります。

また、相続や不動産の売却のように特別な事務が発生すると、特別な報酬が加算されます。

目安は月額で示されていますが、払うのは年払いです。

基本的にずっと続く

成年後見の制度を一度使うと、基本的にはずっと続きます。

正確には、回復するかお亡くなりになるまで続きます。

例えば、「施設の入所契約の支援」をお願いしたいという理由で
成年後見人をつけた場合があるとします。

実際に施設に入り、順調に生活できていても、成年後見人が解任されるわけではありません。

判断能力の低下している状況が続く人には支援が必要だ・・という考え方です。

判断能力が回復すれば、制度の利用を取り止めることができます。

ただ、実際のところ、ご高齢の認知症の方が回復するのは難しいと思われます。
ずっと続くという想定が現実的かと思います。

親族が選任されれば費用を抑えられる可能性あり

報酬は、成年後見人等が家裁に申し立てをして、許可が出れば本人の財産から受け取ることができます。

専門家が選ばれた場合、専門家は仕事として財産管理等を行うので、報酬を下さいという申し立て(報酬付与の申立)を家裁に行います。

親族が選ばれた場合も、報酬付与の申立をして良いです。

成年後見人等は、「報酬を下さい」という申し立てをしても良いのですが、
申し立てをしなくても良いのです。

親族の場合、本人の経済的な負担を避けたいと考えて、また、普段一緒に過ごしている家族として、報酬付与の申立をしないケースも多いようです。

報酬を受け取る申立をしないことによって、本人の支出を抑えることが可能になります。

そのため、親族が成年後見人等になることを望むケースがある・・と思われます。

親族が選任されるには~手続き~

後見開始の申立は、申立書を家庭裁判所に提出することによって行います。

こちらの別記事も併せてご覧ください。↓

申立の用紙は、
本人の住所地を管轄する家庭裁判所から受け取るか、
管轄する家庭裁判所のWebサイトからダウンロードします。

後見開始の申立書に、「候補者」を書く欄があります。
その「候補者」の欄に、親族の名前を記載します。

また、申立書の他の必要事項について、
候補者として記入する必要があります。
添付書類も必要になります。

詳しくは、「本人の住所地」を管轄する家庭裁判所のWebサイトをご覧ください。
※候補者の住所地ではありません。

【重要】親族の候補者が必ず選任されるわけではない

法定後見の場合、成年後見人等を決めるのは、家庭裁判所です。

申立書の候補者欄に名前を書いても、総合的に判断して、最終的に家裁が決めます。

「親族が選ばれないなら、成年後見制度を使いたくない。
 申し立てを取り下げたい。」

と思うかもしれませんが、

希望の人が選任されないという理由の取り下げはできないことになっています。

この「取り下げできない」ことは、
東京家裁のWebサイトの他、各地の家庭裁判所の情報にも明記されています。

問題点として、まとめますと次のとおりです。

・誰が選任されるかは家裁が決める。
・希望している候補者が選任されないこともある。
・希望の候補者が選任されないという理由の取り下げはできない。
・希望していない人が第三者である(=親族以外である)場合、報酬の負担が生じる。
・後見制度の利用は基本的に本人が亡くなるまで続く。

上記は、法定後見を申し立てる上でのデメリットかと思います。

親族を候補者として申し立てると、選任されている親族は、数字上は多いです。

けれども、実際にご自身が選任されるかは家裁の判断なので、
必ず多数派に入れるとは言えません

他人であり、知らない人である「専門家」が選ばれる可能性もあります

申立時に、準備が必要

以上のことから、
後見開始の申立をする際、次のような準備が必要だと考えます。

心情の面で、他人に財産管理等を任せる心の準備。
経済面で、第三者への報酬の負担をする覚悟や準備。

申立にあたり、

・候補者を親族として申し立てても、思いどおりに行くとは限らない。
・思いどおりに行かなくても戻ることができない。
・他人が成年後見人等になった場合は報酬を継続して払うことになる。

・・という現実をを知らないで、後見開始の申立をするのは避けたいところだと思います。

欠格

なお、そもそも後見人に就くことができない人もいます。
「欠格」と言います。
法律で決まっています。

・未成年
・本人と訴訟をしている
・以前、後見人を解任された

などです。

民法
(後見人の欠格事由)
第八百四十七条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者

e-Gov法令検索より

さらに「後見監督人等」が就く場合も

後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人)が就くケースもあります。

こちらも、成年後見人等の選任と同様、
家裁の判断によります。

後見監督人について、大まかにお伝えすると次のとおりです。

【後見監督人】

・第三者(主に弁護士、司法書士)
・報酬が発生する(月額の目安は1~2万円)
・「就くか就かないか」は家裁の判断
・「誰が就くか」も家裁の判断

どういうケースで「親族の候補者ではダメ」なのか?

欠格以外の理由で「親族の候補者が選ばれない」ケースは、

「親族内で、もめごと・争いごとがある」
「財産の価額が高額」などから

「適切な後見事務が期待できない」ケース

と言えます。

情報としては、
東京家裁 後見センター よくある質問」のQ58,59が参考になると思います。
(2023年10月現在)

転載はできませんので、ご興味ある方は検索してみてください。

対策:費用と事前の準備があれば・・・

結局、判断能力が不十分になった後、
突然「成年後見人が必要だから・・」と動くと、

費用負担の心配や、誰がなるのかという点が問題になります。

確かに、すでに判断能力が不十分な方に後見人をつけるとしたら法定後見しかありません。
家裁や専門家等に質問しながら、手続きを行うことになるでしょう。

この記事を読んでいる「あなた」が「本人」の場合は、まだ準備が可能な方だと思われます。

想定外の老後をなるべく避けるために、
一番の対策としては、
本人自身が以下の備えをしておくことだと思います。

・十分な老後の費用を用意して
・任意後見契約をして備えておく

特に

・身寄りがない方、
・お子さんがいない方
・親族がいても疎遠な方
・甥・姪を頼りにしている方

・・上記の方は高齢になると支援者が必要になると思われます。
任意後見などで終活をしておきたいところです。

ただ、正直なところ、費用がかかります
今から、備えていただければと思います。

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