成年後見制度について、少しずつ知っていただこうという企画です。
今回は4回目、手続きと費用の概要を知る回です。
成年後見制度は、法定後見と任意後見があります。
本記事を読むと
法定後見・任意後見の手続きの流れをつかめます。
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成年後見制度の手続き
成年後見制度には、二つの制度があります。
法定後見と任意後見です。
復習ですが、
法定後見は、今すでに判断能力が不十分な状態の方が対象の制度
任意後見は、判断能力があるうちに契約をしておく制度で、実際に後見事務が始まるのは、判断能力が低下した後
です。
いずれも、申請などをしなければ始まりません。
「判断能力が不十分になったら自動的にスタート」という制度ではありません。
以下では、それぞれの手続きはどうなの?という点にお答えします。
法定後見の手続き
法定後見は、後見・保佐・補助の3つの種類(類型)があると、別記事でお伝えしました。
3つの類型、すべて、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。
「申立て」と言うと、口頭で何か伝えるかのようですが、「申立書」を作成して提出することが「申立て」です。
申立人
申立人は、本人、配偶者、四親等内の親族などです。
ご近所さん、友人の方、施設の方など、上記にあてはまらない方は申立てできません。
親族以外の申立
でも、身寄りがいないという方も多いと思います。
親族がいない、申立人がいない、という方のために、
市町村長が申し立てるという方法があります。
民法でなく、福祉関係の法律によって、市町村長による成年後見の申立てが規定されています。
申立後の面談
本人や後見人候補者は、
家庭裁判所から面談を求められることがあります。
どうしても家裁に行くことが困難な場合は面談しないこともあります。
審判
申立書と面談などの調査を経て、審判が下されます。
「審判」は裁判所の決定の意味合いのものです。
審判書には、
・後見開始の旨
・成年後見人
・監督人が就く場合は、成年後見監督人など
が記載されます。
保佐や補助の場合は
代理権についてなど
も記載されます。
審判書が送達されてから、二週間以内に不服申し立てがなければ審判は確定します。
任意後見の手続き
任意後見は、流れが複雑なので、以下に書きます。1~6の流れです。
【任意後見手続きの流れ】
1、 まず、「任意後見契約」を公正証書で結びます。
※契約の相手方は、将来任意後見人となってくれる人(任意後見受任者)です。
2、 本人に、判断能力がある間は後見事務は何も発生しません。
※契約後、まだしっかりしているので、本人自身が今まで通り自分のことを行います。
3、 本人の判断能力が不十分になった。
4、 任意後見受任者や本人は、家庭裁判所に「任意監督人選任申立て」を行います。
※3の「判断能力が不十分になった」状況を受けて、4を行います。
5、 任意後見監督人が選任されます。(審判は2週間で確定)
6、 審判の確定後、任意後見受任者は「任意後見人」として、本人の後見事務を始めます。
任意後見監督人は、任意後見人の仕事を監督します。
手続きとして動かなければならないのは、2つです。↓
上記1の 「任意後見契約をする」
上記4の 「任意後見監督人の選任申立てをする」
以下で、2つの手続きについて取り上げます。
任意後見契約を結ぶ
任意後見契約は、本人の「判断能力がある」ときに結びます。
契約の相手方は、将来、本人の任意後見になる人です。
本人と相手方の両者で公証役場に行って任意後見契約の公正証書を作成します。
任意後見契約の公正証書ができた=任意後見契約を結んだ
といえます。
任意後見契約を結ぶと、
・契約の相手方は「任意後見受任者」になります。
・本人が任意後見契約を結んだことが登記されます。
という効果が生じます。
ただ、この時点では、まだ、後見事務は生じていません。
任意後見監督人の選任申立てをする
任意後見契約を結んだあと、本人の判断能力が低下したときに、任意後見の事務を開始したいところです。
任意後見の事務を始めたい、本人の判断能力が低下してしまった、
というときは
「任意後見監督人」の選任申立てをします。
任意後見は、任意後見人を監督する「任意後見監督人」が就きます。
法定後見の場合は、後見監督人等が就かない場合が多いのですが、
任意後見は、監督人が、必ず就きます。
「任意後見監督人」の選任申立てをする→選任される
ということによって、任意後見が始まります。
任意後見監督人の選任申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
申立人は本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。
注意したい → 任意後見監督人に報酬が発生する
任意後見監督人に報酬が発生します。
任意後見監督人は、弁護士や司法書士が選任されます。
誰が選任されるかは家庭裁判所の判断になります。
弁護士や司法書士は、仕事として引き受けますので、
報酬を請求します。本人の財産から報酬を受け取ります。
報酬の額は家庭裁判所が定めます。
任意後見監督人が就くことは、法律で決まっています。
そのため、任意後見契約の内容には
・任意後見監督人が就く旨
・任意後見監督人に報酬が発生する旨が
記載されません。
任意後見監督人については、
見落としがちになるので、注意が必要です。
まとめ
手続きの概要をお伝えしました。
法定後見は、本人の住所地の家庭裁判所に申立てをする。
任意後見は、判断能力があるときに、任意後見契約を公正証書で結んでおき、判断能力が不十分になったら「任意後見監督人選任の申立て」を行う。
「法定後見」は、家庭裁判所に申立てをする、ということだけですが、
任意後見は二段階の構成になっています。
少し複雑に感じますので、ゆっくりと知っていただけたらと思います。
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